サン=テグジュペリといえば世界累計1億5000万部という不朽の名作『星の王子さま』が特に有名ですが、今週の恋愛格言が記されている『人間の土地』は、フランスで最も権威ある文学賞のひとつとされるアカデミー・フランセーズ賞を受賞し、『夜間飛行』と共に彼の代表作といわれています。
翻訳はフランス文学者であり優れた詩人でもあった堀口大學が手がけており、その格調高い名訳が作品に花を添えています。
一般的に愛するということは、愛し合う二人がお互いをよく知り、見つめあうことですよね。外見が好みだったり、性格の良さ、趣味やセンスが気に入ったりして恋が始まり、お互いをよく知ることで愛が深まっていくもの。
しかし、今週の恋愛師匠サン=テグジュペリは、その根本をくつがえし、「お互いに見つめあうことではなく、いっしょに同じ方向をみつめることである」としています。
もちろん、相手を見ない独りよがりや相手の本質を見誤るような恋では問題外ですし、また、今だけ楽しければ良いという刹那的な恋愛でも、この格言はあてはまらないかもしれません。
でも確かに、恋が深まり真剣な愛に変わっていく過程では、二人は共に人生を歩む伴侶として認め合い、同じ方向を見つめて歩き出すのです。
彼と、彼女と、同じ方向を見つめることができるのか。
お互いを思いやり、共に歩いていけるのか。
今の恋の行く末に悩んだら、一度立ち止まり、澄んだ心でこの恋愛格言をつぶやいてみるといいかもしれません。
今週の恋愛格言をのこしたのは、フランスの作家で航空機操縦士でもあったサン=テグジュペリです。フランス南部・リヨンの伯爵の子として生まれ、スイスで文学を学んだ後、陸軍へ志願して軍用機の操縦士となりました。
退役後にも民間航空界でパイロットとして働くかたわら、26歳で作家として活動を始めます。自らの飛行機操縦士としての体験をもとに執筆した『夜間飛行』と『人間の土地』はベストセラーにもなりました。
もっとも有名な『星の王子さま』は、子供向けでありながら哲学の香りをただよわせた文章と、自ら筆をとって手がけた素朴な挿絵と共に、今も世界中の人々に愛されています。星の王子様のイラストは、本人の肖像画と共にユーロ導入前のフランス紙幣にも採用されました。
軍人として、また民間パイロットとして、生涯を通じて空の世界に生き、第ニ次世界大戦中に44歳の若さで、地中海上空で消息を絶っています。
元貴族という身分にあり、作家として成功してからはパリの社交界で華々しい活躍をしていたサン=テグジュペリは、女性にも大変な人気があったようです。
妻のコンスエロもまた非常に恋多き女性であり、彼はその濃厚な恋愛人生の中で、いくつもの名言を残しました。
「心で見なくっちゃ、物事はよく見えないってことさ、
肝心なことは眼には見えないんだよ!」