「ほどほどに愛しなさい。長続きする恋はみなそうだ」
という今回の恋愛格言は、シェイクスピアの戯曲の中でも最も有名な、
不朽の名作『ロミオとジュリエット』に登場します。
舞台は14世紀イタリアの都市ヴェローナ。
街の二大勢力であるモンタギュー家とキャピュレット家は、一族どころか下男や飼い犬でさえもいがみ合う最悪の関係です。
ある日、血気盛んなモンタギュー家の一人息子・ロミオは、いたずら心からキャピュレット家のパーティに忍び込み、ひとりの少女に出会います。
ひときわ美しく可憐なその少女の名はジュリエット。
仇敵キャピュレット家の一人娘でした。
ふたりは一目見るなり恋に落ち、結婚を約束しますが、憎みあう一族にゆるされるはずがありません。
ロミオは信頼する神父ロレンスに、秘密の結婚式をあげてくれるよう相談するのです。
誰にも見つからないうちに結婚式をあげようとあせるロミオを、ロレンス神父がたしなめます。
「激しすぎるよろこびというものは、とかく終わりを全うしない、
勝利のさなかに命を落とす。(中略)だからな、
愛はすべからくほどほどにするがよい、いのち長い愛はみなそうだ。
過ぎたるは及ばざるがごとし、というからな」
(中野好夫/訳 『ロミオとジュリエット』 新潮文庫より)
しかし、良心ある人の努力の甲斐なく、ふたりの恋は悲劇的な最期を迎え…。
この先はぜひ原作や映画・お芝居でご覧くださいね。
このほかにも、シェイクスピア作品には多くのためになる名言・格言があります。
「金の貸し借りをしてはならない。金を貸せば金も友も失う」 (『ハムレット』より)
「本を読んでも、物語や歴史に聞くところからでも、真実の恋は滑らかに運んだためしがない」 (『真夏の世の夢』より)
「嫉妬は、自分で生まれて自分で育つ、化け物でございます」 (『オセロ』より)
今週の恋愛格言をのこしたのは、イギリスのエリザベス一世統治下で活躍したウィリアム・シェイクスピアです。
いわずと知れた世界演劇史上最高の劇作家・詩人であり、歴史に名をのこす40作品を超える傑作戯曲を書いています。
1564年、シェイクスピアはイングランド王国ストラトフォードで8人兄弟の3番目として生まれました。
幼いころは大変裕福でしたが、父の失職から家は次第に没落し、大学に通うことはできなかったといわれています。
少年時代の記録は残っておらず謎に包まれていますが、20歳の半ばごろからロンドンで俳優として活動を開始したことがわかっています。
1590年に発表した『ヘンリー6世』を皮切りに、劇作家としての才能を開花させていきました。
四代悲劇と呼ばれる『ハムレット』、『マクベス』、『オセロ』、『リア王』をはじめ、『ロミオとジュリエット』、『ヴェニスの商人』、『真夏の世の夢』、『リチャード三世』などの代表作は、シェイクスピアの死後400年たった現在も世界中の演劇人に愛され、各国で毎日のように上演されています。