ラブレターを書いたことがあるという人は、今どのくらいいるでしょうか。
手軽なコミュニケーションツールがたくさんある現代では、まとまった文章のラブレターを書いた経験がある人は相当少なくなっているでしょう。
でも、人間が文字を発明して以来つい最近まで、ラブレターは愛を伝えるための重要な手段のひとつでした。
日本では、古くは奈良時代の万葉集などに愛の歌が残されていますし、戦国時代の武将や、明治の文豪もたくさんのラブレターを書いています。
世界最古のラブレターは紀元前18世紀にさかのぼると言いますから、その歴史はとても古いんですよ。
しかし、ラブレターを書いた経験がある人ならだれでも、時間がたってから読み返し、恥ずかしい想いをしたことがあるはずです。
特に思春期の夜中に書いたラブレターのカオスなことといったら!
相手を想う気持ちが強ければ強いほど、文面は冷静さを失って、おかしな言葉遣いにおかしな文法と、とても人には見せられない内容になっていきがちです。
でも、思想の巨人・ルソーはいいます。
「ラブレターを書くには、まず何を言おうとしているのか考えずに書きはじめること。そして、何を書いたのか知ろうとせずに書き終わらなければならない」
ラブレターというものは、自分の中では処理しきれない熱い想いがほとばしったものですから、誰が書いても理路整然とはいきません。
大切なのは、自分の気持ちを素直に伝えること。
そして、相手への思いやりを忘れないことですよ。
今週の恋愛格言をのこしたのは、フランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーです。
ジュネーブ共和国(現在のスイス)に生まれ、ヨーロッパ各地を放浪した後パリに渡り、歴史的な名著『社会契約論』や『エーミール』などを書いています。
生家は比較定期裕福でしたが、ルソーの生後すぐに母親が亡くなり、10歳の時に父親が告訴されると家族はバラバラに…ルソーは孤児同然となってしまいました。
幼い奉公人として時には虐待を受けるような不遇な生活をおくりながら、ルソーは唯一のよりどころであった読書を続け、過酷な体験を通して人の本質について考えるようになります。
カトリックとプロテスタントが激しく対立する近代ヨーロッパはまさに思想の転換期であり、称賛と歓喜、糾弾と迫害にさらされながら66歳で亡くなるまで、ルソーは激動の歴史の中で確かな存在感を示し続けました。