恋愛について、広辞苑(第6版/岩波書店)では
「男女が互いに相手を恋いしたう事。また、その感情。」
ユニーク辞書としてコアなファンをもつ『新明解国語辞典』(第7版/三省堂)では
「特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔いないと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと」
と定義されています。
いつの時代も、恋愛は思い通りにいかない複雑怪奇な存在で、人間の心を悩ませてきました。
この想いは伝わるのか、この先どうなってしまうのか、考えれば考えるほど真っ暗闇の迷路に入りこみ、正解のない問題を解き続けているような、自分ではどうにもしようがない状態…。
そんな時、「この恋はきっとかなう!想いが通じてあの人と幸せになれる!」とポジティブに考えられる人は、なかなかいないものです。
多くの人は失恋してしまうのではないかとネガティブな妄想に取りつかれ、食欲がなくなったり、気持ちが落ち込んでふさぎ込んだりしてしまいます。
しかし、数多の魅力的な文化人とドラマティックな恋を経験してきた恋愛のカリスマ・女流作家の宇野千代先生は言います。
「人間というものは誰でも、自分の思った通りの人になるものです。失恋しやしないか、失恋しやしないかと思うと、失恋するのです。」
「自分は出来る、そう思い込む。その思い込み方の強さは、そのまま、端的に自分の芽を伸ばすからです。」
宇野千代先生は、14歳で親の決めた相手と結婚させられたものの、たった10日で実家に戻り、その後は思うがまま、数多の魅力的な男性と濃密な恋愛をしてきた女性です。
誰もが振り返るような美女だったわけではなく、長い間色黒であることにコンプレックスを抱えているほどでしたが、明るくハキハキとした性格で、若いころから男性に非常に人気があったといいます。
きっと生涯愛した桜のように、彼女の自信に満ちあふれて咲き誇る姿を魅力的に感じる男性が多かったのでしょうね。
千代先生はこのテーマをこう締めくくっています。
「自分に自信があると言う事は、素晴らしい事である。多少それが自惚れに過ぎない事であっても、自信を持つ事は良い事だ、と私は思っている。
自信は能力を作り出すことにつながっている。
(中略)何でも過ぎるということは確かに欠点かもしれない。
でも、何もしないでじっとしている人よりはましだと思うのであるがどうであろうか。
あなたも自信を持って彼の前に立ってください。」
自らの豊富な恋愛体験から生まれた千代先生のアドバイスは、きっとあなたの恋を一歩前に進めてくれるはずですよ!
※参考・引用 宇野千代『恋愛作法 愛についての448の断章』(集英社文庫)
今週の恋愛格言をのこしたのは、日本を代表する女流作家で、実業家・着物デザイナーでもあった宇野千代です。
作家としての代表作は、母親をモデルにして映画化もされた『おはん』、菊池寛賞を受賞した『雨の音』、女流文学賞を受賞した『幸福』などがあり、破天荒な自身の生活を題材にしたエッセイも多く発表しています。
さらに、日本初の本格ファッション誌『スタイル』を編集長として創刊、みずからモデルを務めながら着物デザイナーとしても活躍しました。
また、恋多き女として、作家の梶井基次郎、画家の東郷青児(後に結婚)などの著名な文化人と浮名を流しています。
明治生まれの女性としては考えられないほど型破りなその人生は、多くの女性の恋愛観に影響を与えました。
4回の結婚と離婚、そして数え切れないほどの恋を楽しみ、98歳で生涯を閉じるまで、華やかに、そして艶やかに時代を駆け抜けていきました。